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陶方見聞録

当社のプロ用電動ろくろRK-1XとRK-3Dを計200台完備した陶芸実習室。学生一人に一台の電動ろくろが割り当てられている。


京都伝統工芸大学校は、「大学卒業資格(学士号)」と、「陶芸士・工芸士」の在学中の取得ができる唯一の大学校である。陶芸士は(財)京都伝統工芸産業支援センターが認定する資格制度。陶芸の技術力の証でもあり、同大学の2級取得者の就職率は100%という。「工芸士」もまた同支援センターが認定する資格制度で、木彫刻や仏像彫刻など各工芸それぞれに「工芸士」の資格を設定している。いずれも技術力無しには取得できない資格であり、京都伝統工芸大学校はその取得のための実践向きの学校として他の美大や芸大とは一線を画している。

学生は高校や大学、美大や芸大の卒業生、社会人、窯元からとバラエティに富み、全国から集まっている。年齢も様々で現在10代から70代までの学生が学んでいる。 キャンパスは京都市から車で約30分の南丹市にある。広大な敷地には各工芸専用の実習室やカフェテラス、図書館、学生寮などがあり、設備もかなり充実している。当社のプロ用電動ろくろRK-1XとRK-3Dを計200台完備した陶芸実習室。学生一人に一台の電動ろくろが割り当てられている。この取材の日も多くの学生が熱心にろくろを回していた。他にも、茶室など、最新の施設や設備を整えている。また、同大学校の関連施設、京都烏丸三条の京都伝統工芸館は、伝統工芸の魅力を幅広く紹介する。同時に卒業生のサポート拠点としても機能している。


講師陣は伝統工芸に従事している第一人者ばかりだ。そのひとり、陶芸専門コースの工藤教授と学生の旗野さん、町田さんに話を伺った。

工藤教授は一時期、東京でサラリーマンをしていた。その後、京都に戻り独立。自分の工房を持った。縁あって京都伝統工芸大学校に来たのは37歳の時という。当時から、カリキュラムから指導方法まで全て任されてきた。工藤教授の教えは、人間性の指導にこだわる。挨拶や掃除、言葉、態度など社会で生きていく上で最低必要なことがしっかりしていれば、多少技術が不足していてもカバーできるというものだ。もちろん伝統工芸に関わるプロ中のプロを育てたい。しかし、基本は人間性という。「挨拶や掃除は教えれば誰でもできるでしょう。できるようになる。でも技術は教えますがどうしても個人差がでる。陶芸でもそうですが、新しい技術を自分のものにするには相当の努力と時間が必要です」と。だから、まずは挨拶や掃除をしっかり教える。

インタビュー後、陶芸実習室に入るとすぐに何人かの学生さんが自然に挨拶をしてくれた。空いた時間に自主的に電動ろくろの練習や絵付けをしている。途中、学生さんからの質問で、工藤教授がろくろの前に座り実演した。たちまち何人かが集まる。笑顔で指導されたが、学生はみな真剣な目で見、アドバイスを受けていた。 工藤教授の最初の授業は大掃除だそうだ。雑巾やホウキも陶芸の道具も共通するところが多く、うまく使えるようになることが大事。これは他の伝統工芸の職場でも欠かせない。入学当初はうまく使えない学生も結構いるが、次第によくなる。そんな学生が今ではプロジェクトを組んで在校中から伝統産業に貢献している。同校の学生による、京都では話題になった清水寺の「大黒天像」の修理、修復もそのひとつだ。

人間性と技術を兼ね備えたプロの伝統工芸士を育てたいと言う工藤教授。やはり技術にもこだわりがあるようだ。「素晴らしい作品は必ず技術に裏づけされた何かを感じる」とは、波佐見焼のコンテストの審査員としての言葉だ。




旗野香織さんは、そんな工藤教授の教え子で陶芸専門コースに在籍している。新潟・阿賀野市の出身。実家は庵地焼の窯元「旗野窯」である。創業明治11年、その伝統を受け継ぐ三姉妹の窯として有名である。2004年には、 芥川賞作家の 津村節子さんが「旗野窯」を舞台にした小説「土恋」で三姉妹が家業を継ぐまでの話を描いている。香織さんはその三姉妹、佳子さんの次女だ。

庵地焼の特徴を教えてもらった。生活用品が基本で色は光沢のある黒が多く、使いやすさを重視した親しみやすい陶器という。

取材した日、香織さんは絵付けに真剣に取り組んでいた。「庵地焼では絵付けはしないんですが、好きなんです。実習でもあるから」と。当社の電動ろくろの使い勝手を聞くと「旗野窯では蹴ロクロを使っているから」と驚きの答えが返ってきた。ロクロだけでなく、旗野窯では一から手作りで地元産地の土を使っているそうだ。先代の志を引き継ぎ伝統を守り続けている。

もともと陶芸ではなく、ケーキ職人になりたかったという。しかし、伝統を重んじる母の気持ちにほだされて陶芸を始めた。「ケーキは食べたら終わり。陶芸は形が残るし、伝統もある。継いでほしい」と。そして昨年の4月に京都伝統工芸大学校に入学した。12月、旗野窯では7部屋の巨大な登り窯に35年ぶりに火が入る。いずれ三姉妹の跡を継ぐ香織さんもこの窯で焼く。その作品を見られる日は近い。




町田智彦さんは長崎生まれの29歳。社会人を経て陶芸専門コースにこの春入学した。東京のコンピューター関連の会社で働いていた。箱根の観光地でたまたま陶芸を体験したことがきっかけという。しかし、もともとは地元長崎の波佐見焼にも興味があり、波佐見高校の陶芸コースにも行きたかったそうだ。

会社勤めを始めて数年後に、自分にしかできない何かをしたいと思うようになった。「それが陶芸だったんです」と明るく答えてくれた。「自分の手で土が形になっていく喜びを実感しています。感じるものの全てが新しいですね」と。「いろんな業種も同じだと思いますが、特に陶芸の職人さんの世界は努力する人が強い人だと思っています」。今はその職人を目指している。波佐見にこだわらず地域はどこでもいいという。

大学校について伺った。「まず、機材が充実していることに驚きました。電動ろくろが、学生一人に一台割り当てられています。それに、当たり前なんですが先生が本物なんです。凄い技術ですよ。見ても聞いても勉強になります。楽しんでやることを教えてくれますね」。休日は陶器市や美術館を巡り、いろんな人の作品や技術を楽しみながら勉強している。



挽きかけのロクロをまた挽いてもらった。笑顔が真剣な表情になった。指導を受けて半年余りという、相応の腕前か・・・。
(聞き手:船)

京都伝統工芸大学校

1993年 経済産業省により支援計画の認定
1995年 京都伝統工芸専門校として開校
2000年 京都府より専修学校の許可
校名を「京都伝統工芸専門学校」に改称
2001年 イタリアとの交流事業スタート
2002年 京都伝統工芸館竣工
2007年 校名を「〈専〉京都伝統工芸大学校」に改称

伝統工芸学科
高度専門課程〈学士号取得コース〉/4年制
本科/2年制
〈陶芸専門コース〉
陶芸専攻
〈総合工芸コース〉
木彫刻専攻・仏像彫刻専攻・蒔絵専攻・木工芸専攻・金属工芸専攻・漆工芸専攻・竹工芸専攻・石工芸専攻・和紙工芸専攻

詳しくはWEBSITEで http://www.task.or.jp/index.html

電動ろくろは全て特注のろくろ枠に入っている

当社の特注の電気窯

教授と卒業制作の打ち合わせ

卒業制作用の図面

工藤 良健
京都府生まれ
陶芸を始めたのは20歳のとき。
1993年に独立、京都・るり渓で工房をもつ。
1995年から京都伝統工芸大学校へ

旗野 香織
新潟県阿賀野市生まれ
実家は庵地焼の窯元。
2006年4月京都伝統工芸大学校へ入学

町田 智彦
長崎市生まれ
東京での会社勤めを経て
2007年4月京都伝統工芸大学校へ入学

伝統工芸の魅力を紹介するとともに卒業生をサポートしています。
WEBSITE http://www.task.or.jp/dentou/index.html